2月5日 はれ

私は海洋に漂う大きな船の上で永久に生きる吸血鬼と対峙していた
私達の他には甲板に誰もいない決闘の場所
船体は既に燃え盛る炎によって奪われかけていた
波に映える強い炎と暗い水のコントラクションは絶望へと船を誘っていく
腰元には純白の日本刀
うねる刃文が退魔の章を現す業物だ
例え吸血鬼とはいえ一刃にして斬り伏せられるだろう
私は眼前の魔性を見据え、自分の呼吸を整えていた
何よりも先決なのは自分の意思をコントロールする事だ
どのような場合であれ常に自分を保てる者だけが生き残れるのだ
しかし、私の前にいる魔物は私には何ら興味がないかのように天を仰いでいた
その色の無い口元には鮮やかな犠牲者の血を
その頬には一筋の涙が夜目にも分かるほど炎の煽りを受けて輝いていた
その口元が誰に問う事もなく開く
「私は…これまで何をしてきたのだろう」
「私のこれまでの時間に果たして意味があったのだろう」
「私の心は一体どこへ行ってしまったのだろう」
目の前で多くの血を啜ってきた忌み者が悲嘆にくれている
「私は…私は神を呪う!!」
空を仰ぎ高らかに宣言する
私には彼の苦悩は分からないし
分かろうとすら思いはしないだろう
しかし、私は未だ決断できずにいた
道は二つ
この魔物を斬り殺し、これまでの自分を
自分に仇なす存在は須らく狩ってきた自分でいるか
自らの歩んできた道を捨て、彼を許すのか
私には、その二つしか浮かばなかった

今の心境ですわ(苦笑

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